2013年3月5日
ご近所さんが本を貸してくれました。
以前私がお貸しした、吉永南央の 「萩を揺らす雨」が面白かったから
続編の「その日まで」を買って、ついでに「さくら」も買ったのでどうぞ、と言うことでした。
書店でガーデニングの本を探していて、チラッと見えたタイトルに
とても惹かれて買ってしまいました。
結婚に失敗しその上最愛の一人息子さえ事故で亡くしてしまった
決して人生の成功者とは言えないおばあさんが自分の趣味の店を持ち
そこで遭遇する様々な人間臭いトラブルを解きほぐしてゆくお話です。
人生の表舞台ではもう活躍することは出来ない、と思いがちな
年齢である主人公がその辛かった経験から得た思いやりや洞察力を
武器にどっこらしょっと頑張るお話に私は共感します。
コーヒー豆と吟味した和食器を売る店を経営しているという設定も素敵。
第2弾では、主人公の店の近くにライバル店がやってきて
色々な嫌がらせを仕掛けてくるのですが、そのやり方がまさに
今の社会を表しているのです。
弱い立場の人々を金と力に任せてどんどん追い詰め、
全てを剥ぎ取る恥知らずなやからとの戦い、でしょうか。
主人公がその温かい眼差しで日々係る人達との交流の中で育んだ現在の横の人間関係、
主人公と登場人物おのおのの生きて来た長い時間軸の中での複雑な縦の人間模様、
そのどちらもが作用し合う。胸がきゅんとする恋や愛の形もあり、
後で後悔するより今投げ出さない、と頑張る弱くて強いおばあさんが
いつか問題を解決に導く、そんなほろっとするお話です。
西加奈子 「さくら」 グッと来ました!
この日は夫が東京出張で帰らないので「ゆっくり出来るわ」、と夜から読み始めたのですが
結局朝の4時まで読み通してしまいました。
貸してくれたご近所さんが「これ、お孫さんの性教育に良いよ」と言っていたので
? と思いつつ読み進めたのですがなるほどです。
でも、5年生にはちょっと無理かな?
順風満帆の理想的な家族が兄の事故をきっかけに
狂い始め、全員がそれぞれに深く傷つき、何とか生きているだけ。
空中分解し始めていた家族をかろうじて繋ぎ止めていたのが
老犬のさくらの存在でやがては彼女が家族に立ち直る
きっかけを投げかけてくれるのですが、
ああ、とにかく読んでください!
感じ方はひとそれぞれ、べつに何も感じないと言う人もいるでしょうが。
私は、ウッと来ました。
世の中理不尽がいっぱいだ!
小さい子どもも大人になりかけの子どもも大バカ!
信じられない幸せもやって来る!
事実は小説よりも奇なり!
これはあなたの家族の物語であり
私の家族の物語であります。
この本を読みながら、泣いて、吹き出して、胸が締め付けられての
数時間でしたがその中で うんこチキンレースをやっているくだりは
声に出して 「あほやなー!」と言ってしまいました。
今度男の子の孫に「いつもどんな事して遊んでる?」と聞いてみよう。
それにしても、”読み物” をこんなにゆっくり楽しめる歳になったんだ
とつくづく感じます。子育てして仕事をして親の介護をしていつもいっぱいいっぱい
だったのに、読むとすれば実用書しか考えられなかったのに。
歳はとったけど少しは自由な時間が出来て有難いことです。
又何かいい本に出会えると嬉しいな。